2024.02.08 09:20【著作権】生成AIと著作権 - 報道機関の視点 (Generative AI and Copyright - Press Perspective)2023年12月27日、米大手紙ニューヨーク・タイムズが、OpenAIとマイクロソフトを著作権侵害でマンハッタンの連邦地方裁判所に訴えました。OpenAIはChatGPTの公開元です。内容は、自動チャットボットのトレーニングのために新聞社の記事を膨大に使っただろう、という訴え。タイムズ紙、著作物のAI利用を巡りOpenAIとマイクロソフトを提訴(https://www.nytimes.com/2023/12/27/business/media/new-york-times-open-ai-microsoft-lawsuit.html)主張によれば使用された記事は数百万件、よく数えた(そこじゃない)。流石、数少ないニュースメディアの成功例、大手メディアが...
2023.11.04 05:00【知的財産】BTSの知的財産管理戦略が秀逸な件 ([IP] BTS’s excellent intellectual property management strategy)知的財産は無形なので、マネタイズが難しい。ライセンスや著作権、商標登録、特許、専門領域かと思いきや、SNSで十分一般人にも身近に関わる法律です。例えばアーティストが曲を発表すると、作詞、作曲、アーティスト、カメラマンが撮るスチール、ジャケデザイン、既に著作権があります。包括契約とは思いますが、著作者人格権は動かないので、そのあたり各社にテンプレがあると予想。発売後は、SNS拡散、翻訳、カラオケ、引用の枠を超えた転載転用、二次利用が発生します。表現者が自身に集中して創作に取り組むためには、周りのサポートが必要不可欠です、だからこそ会社所属は強い。契約書のテンプレもライセンス系はネット上に少ない印象です。(テンプレ蔓延したらそのへん仕事にしてる人は困るだろ...
2023.08.11 02:10【著作権】肖像権とパブリシティ権([Copyright] Portrait rights and publicity rights)肖像権とパブリシティ権の違いは、対象者に顧客吸引力があるかどうか。パブリシティ権を認められる著名人は、名前を冠しただけで商品が売れます。「●●監修」とか「●●バージョン」とか。条文には記載なしこれらの権利、現時点(2023年)日本の法律では明文化されていません。法律を変えるには手順も時間もかかりますし、著作権法の構成自体が追加対応なので、別の法律でカバーされる方が早いかも。と個人的には思っています。なので、何か問題があったとしても厳密に「違法」とは言えなくて(法にないから)、実際の判例をもとに、このときは侵害でしたね、と解説できます。もちろん民法でカバーされたり賠償請求は可能です。ケースバイケースが多いのと、「普通こうだよね」の基準は曖昧ですから、事例...
2023.07.31 06:00【著作者人格権】誰にも渡せない3つの権利([Moral rights of the author] Three rights that cannot be transferred to anyone)著作権を広義でとらえるときは外せません。著作者人格権とは、つくった人だけが持つ、相続も譲渡もできない、一身専属性の権利です。公表権(公開するか否か)氏名表示権(名前出すか否か)同一性保持権(意に沿わない改変を許さない)著作者人格権には、上の三つがあります。似た感覚で、先日書いた「著作隣接権」を持つ実演家には、「実演家人格権」が存在します。こちらはカテゴリが隣接権の下ですね。1. 公表権 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。(著作権法第十八条)もし著作物が未公表だったとき、...
2023.07.15 06:00【著作隣接権】著作物に関わる者の権利([Neighbouring rights] Rights of persons involved in copyrighted works)著作権でややこしい箇所のひとつに、著作隣接者である実演家レコード製作者放送事業者有線放送事業者の4者それぞれにも権利が決められていることがあります。(著作権法第四章著作隣接権)放送事業者と有線放送事業者って…どうして分かれてるのか。試験対策は丸暗記です。いや使うならちゃんと理解した方がいいけれど。4者は著作物と密接に関わります。著作隣接権者の権利は、著作権と同じく、その瞬間から権利が発生します。届け出も登録も必要ありません。ただ著作物を使う時は、一般と同じく作成者に許諾が必要です。4者が持つ「複製権ほか物権」「著作者人格権に準じた人格権」「報酬を請求する権利」3つの権利のうち、物権についてが狭義の著作隣接権となります。法律条文では、実演(著作権法第2条...
2023.05.08 17:00変わった著作物④共同著作物(Diverse copyrighted works④Joint work)著作物の中の変わり者④共同著作物です。各人の言い分や状況・経緯により判断が難しい。共同著作物 二人以上の者が共同して創作した著作物であつて、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。(著作権法第二条1項十二)つまり分けられない著作物を指します。なので挿絵+文の絵本、詩+曲の楽曲は共同著作物ではありません。絵本のイラストも、楽曲の詩も、別々に分けて使えるからです。ひとつの作品として扱う際はそう呼ばれることもあるでしょう。ただ絵本も楽曲も、個々の著作物が合体した作品とみなされるので「結合著作物」と呼ばれます。化学式みたい。では「共同著作物」とは何か。例1:Aさんが話した経験を、Zさんがドキュメンタリー記事にしました。 Aさんが話した...
2023.04.21 02:50変わった著作物③データベースの著作物(Diverse copyrighted works③Database work)著作物の中の変わり者③データベースの著作物です。昨今は用語の説明いらないくらい浸透しているので簡単に…データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。(著作権法第二条1項十の三)条文には独特の言い回しやお堅いイメージがあるので(電子計算機や公衆送信用記録媒体やら)、カタカナ入ると目を引きます。ちなみに条文内でレコードは「蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの」と定義してあります。時代を感じる。データベースの著作物データベースの著作物 データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。(著作権法第十...
2023.04.18 06:00変わった著作物②編集著作物(Diverse copyrighted works②Edited works)著作物の中の変わり者②編集著作物について。例えば、辞典や詩集、新聞、雑誌が該当します。編集著作物もともと「著作物」は表現であるので、単なるデータや事実は含みません。でもそれを集めたら…選び方・並べ方、に創作性が発生して、集合体そのものが著作物になります。編集著作物 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。(著作権法第十二条1項)使う素材が著作物かどうかは関係ありませんが、著作物だったら編集するときに素材の著作者に許可が必要です。雑誌読者が雑誌をコピーして営利で使いたいときは、雑誌社+各素材の著作権者にOKもらわねばなりません。まあ編集するときに各素材の著作権は雑誌...
2023.04.15 07:15変わった著作物①二次的著作物(Diverse copyrighted works①Derivative works)著作物の中の変わり者を紹介します。今回は二次的著作物についてです。二次的著作物著作物に手を加えて新しく創作すると、「二次的著作物」になります。二次的著作物 著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。(著作権法第二条十一)翻訳*:別の言語に表現しなおす(英語など)編曲:既存の音楽の著作物をアレンジする変形:絵を彫刻にしたり、写真を絵にしたりする翻案*:脚色、映画化など1*:点字や暗号を日本語にするのは翻訳ではありません)4*:プログラムのバージョンアップを含みますもともとが著作物ではないものに創作を加えたら、それはオリジナルの著作物です。この「二次的著作物を作る権利」も、もともとの著作権者...
2023.04.13 07:10【引用】著作物を自由に使いたい([Quote]Free use of copyrighted material)他人の著作物を自由に使う方法のひとつに、「著作権の制限」事項「引用」があります。個別で詳しく聞くとアウトな場合もありますが、ここでは私が前職(新聞社/オウンドメディア)で判断していた基準を載せます。一般的な他者(企業含む)の主張・資料(第32条第1項)についてです。行政資料(第32条第2項)や新聞の論説(第39条)、政治や裁判(第40条)は別に条文があります。【引用の判断基準】公表されている公正な慣行(必然性/主従が明確)正当な範囲内引用元の明示著作者の権利を不当に害しない上記がポイントになります。「引用」ですから、そのまま持ってくることが前提です。間を省略したときはその旨を書きましょう。なぜなら、一部を省略すると誤解を生じることもあるからです。前述の...
2023.04.09 08:20新聞記事の著作権 (Newspaper article copyright)新聞記事というのは、本当にたくさんの著作物を扱います。だからって例えば絵画を掲載する時に著作者に許可を取らなくていい。なぜか?先日書いた「著作権の制限」事項に、時事の事件の報道のための利用が規定されているからです。著作物に関する時事の事件を報道するために、その著作物を利用する場合、又は事件の過程において著作物が見られ、若しくは聞かれる場合にはその著作物を利用できる。同様の目的であれば、翻訳もできる。(著作権法第41条)この95字がニュースに関する著作権を許容しています。この条文があるからこそ、前職の新聞社では、著作権についてさほど意識されていませんでした。記事を書くときには影響しないので…。もちろん、事件の発生場所、時刻、罪状、逮捕者など、事実を羅列し...
2023.04.08 04:10著作権の制限 (Copyright restrictions)著作権法には制限規定があります。「このときは使えるよ」を示した一覧です。言葉が直観的じゃないですね。説明しづらい。つまり、規定に書かれている状況下では、著作権法の効力が「制限」される=使っていいですよということです。アメリカにはフェアユース規定がありますが、日本の著作権法は限定列挙(制限列挙)なので、厳しめ。法に書かれている規定が全てです。なので時代に応じて改正がある。とはいえ解釈次第なので、現場はグレーゾーンの海です。